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新しく作り出された通貨について違った考え方をしてみよう。
お金とは、ある人がモノやサービスを提供した対価として得られるものである。 ある人がリンゴを買う場合、買うという行為の前に、自分のモノやサービスを提供して金を得ている。
だから、その人はリンゴを買えるのだ。 それは、その人が、誰かが必要としていた財やサービスを提供したからだ。
それでは、政府と関係がある企業や銀行が連邦準備銀行の恩恵を受け、新しく発行された通貨が彼らに流入している状況を想像してみよう。 この通貨は何の裏付けもなく、何か財やサービスを売った結果でもない。
従って、優遇されている企業がそうした通貨を使用する場合、企業は自分では何も提供しないで、そうした通貨を使って財やサービスを経済から奪っていると言うことができる。 社会全体の利益を犠牲にして自分たちが利益を得ていることになる。
優遇されている企業は財のストックから、見返りなしに財を奪っているのだ。 彼らが支払いに使う、彼ら自身が財やサービスを提供して得た金ではない。
その金は何もないところから生みいと思っている。 そして、パンとジュースを交換するのではなく、ジュースを盗む。
これが優遇されている企業がやっていることだ。 もう一つの問題は、インフレーションは貯蓄を妨げる。
人々が自分の持っている金の価値が時間を経ると減少すると分かっている場合、彼らは、金を貯めてその購買力が落ちていくのを選ぶより、金をすぐに使う方を選ぶ。 倹約という古臭い美徳が軽蔑され、見下されるようになった。

そして、すぐに満足を得ることが良いこととされるようになった。 インフレーションの極端な形態であるハイパー・インフレーションでは、この貯蓄の軽蔑という現象が顕著に現れる。
ハイパー・インフレーションの状況下では、どんなモノでもすぐに消費されてしまう。 人々が通貨当局は通貨供給を増やし続け、通貨の価値を下げようとしていると知ったら、通貨の購買力がなくなる前に、彼らは競い合うようにして通貨を消費する。
これは「実物への回避と呼ばれる現象だ。 この現象は、人々が通貨を所有するのを放棄して、それを自分たちが手に入れることのできる実物に交換する。
ハイパー・インフレーションの間に金を貯蓄しようとするのは、少し頭が足りない人だ。 なぜなら、ハイパー・インフレーションによって、金の価値が奪われてしまう危険性が高いからだ。
しかし、こうした話は極端なケースである。 一般的な教訓は、インフレーションは貯蓄を妨げるというものだ。
何の裏付けもない紙幣が出現する以前、人々は、未来と老後に備えて、通貨として流通していた金貨や銀貨を貯蓄していた。 金貨や銀貨は時間を経ても、その価値が保たれるか、もしくは上昇した。
それは、コインに含有される金や銀の量が一定に保たれていたからだ。 その一方で、経済全体で取引される財やサービスの量は増加していった。

現在では、何の裏付けもない紙幣は時間が経つごとに価値が減少していく。 そんな状況で、連邦準備制度が発行した紙切れ(ドル紙幣)を貯蓄することで老後に備えようとするのは少し頭の足りない人だけである。
インフレーションに追いつくために、その人は金融市場に手を出さざるを得なくなる。 その可哀想な人は金融市場で、自分の持っている金を投資するという、困難な、そして高いリスクを伴う決断をしなくてはならない。
投資という危険を冒すのは、自分の目の前で、老後のための虎の子の資金が価値を失っていくのを防ぐためだ。 連邦準備制度は国債の購入や銀行の準備預金を増加させて通貨供給を増やす。
通貨供給の増加によってもたらされる結果は、通貨の価値の下落だけではない。 通貨供給の増加によって、リスクの高い行動が増え、貸し付け基準が引き下げられ、景気循環が起こるのだ。
こうした現象を促進し、経済を深刻なまでに破壊した後に、連邦準備制度はさらに経済を破壊することができる。 それは、最も無責任な行動を取った経済主体を救済するという方法を取る。
通貨を専門とする経済学者のHは次のように書いている。 「紙幣を発行する主体は、すべての市場参加者を救済できる、ほとんど無制限と言ってよいほどの能力を持つ。
この能力によって、〃モラル・ハザード″として知られる問題が発生する。 紙幣を発行する主体と個人的に、もしくは職業的に良い関係を持っている市場参加者はリスクがかなり高い事業に投資する。
その投資が失敗しても、紙幣を発行する主体が彼らを救済する」この項で語ってきた問題のすべては、金貨や銀貨のような物品貨幣が流通していれば避けられるはずの問題である。 金貨や銀貨の供給量は紙幣ほど容易には増やせない。
しかし、物品貨幣に返る可能性はないので、私たちがテレビで見る評論家たちも、抑撤するとき以外には物品貨幣に言及することはない。 その一方で、彼らは、政府の独占的な力と中央銀行の通貨と金利の操作によって生み出された問題を、無責任にも「自由市場」のせいにして批判している。

これまで見てきたように、物価の上昇は通貨供給量の増加の結果である。 より多くの通貨が作り出され流通すると、通貨そのものの価値が下がり、財を購入する際により多くの通貨が必要となる。
しかし、政治家は私たちに対して、物価の上昇は政府のせいではなく、経済的に卑怯な悪者たちのせいだと説得しようとしている。 政府というものは伝統的に、不人気ゆえにスケープゴートにされやすい無実の人々に物価上昇の責任を押しつけてきた。
従って、長年にわたり、物価の上昇は、労働組合、強欲な企業家、投機家のような存在のせいにされてきた。 そのような粗雑な主張は最近ではさすがに聞かれなくなった。
にもかかわらず、インフレーションについての粗雑な解説は相変わらず垂れ流されている状況だ。 その具体例としては、石油価格の高騰や「経済の過熱」といったものである。
多くのアメリカ人が、石油価格の高騰がインフレーションを引き起こすと信じている。 その主張によれば、ガソリンは経済活動においてとても重要であり、様々な財の生産プロセス(財の運搬など)にガソリンが関わっているので、石油価格の高騰によって、すべての製品の価格とは言わないまでも、多くの製品の価格が上昇してしまう。

実際には、石油価格の高騰は物価の上昇を引き起こしてはいない。 ガソリンの一ガロン当たりの価格が上昇する場合、人々は、価格の上昇前に比べて、多くの金をガソリンに使うようになる。
そして、石油以外の財やサービスを買うためのお金が少なくなる。 これが、ヨスト・プッシュがインフレーションの原因だとする解説の根本的な間違いである。
これは、ガソリンのようなある一つの物品の価格が上昇しているのですべての物品の価格が上昇する、という説明である。 人々がガソリン以外の財やサービスに充てられる金が少なくなると、ガソリン以外の財やサ−ビスの価格を下げようとする圧力が発生する。
従って、ガソリン価格が上昇し、ガソリン価格の動きにつられ易く、需要が決まっているような財やサービスの価格までもが上昇したら、人々の他の財やサービスに割ける金が少なくなる。 そして、ガソリン以外の財やサービスの需要が減るとともに、価格も下落する。

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